助成事業

肺がん みんなで闘う=秋田

 肺がんの患者同士が集まり、治療に伴う悩みや不安を分かち合う相談会などを開いている秋田県肺がんネットワーク「あけびの会」(美郷町)が、公益財団法人「正力厚生会」が公募した2013年度がん患者団体助成事業の助成対象に選ばれた。代表を務める藤井婦美子さん(64)は「会の存在を知るだけでも、患者にとっては大きな希望につながる。今後も地道に活動を続けたい」と話している。
 同会は2003年11月、肺がん患者や、過去に肺がんを患った経験のある人で結成。会の名前の由来は、皮を開くと両肺のように見える植物のアケビから。アケビが宿す無数の種を「希望の種」に見立て、患者が明日への夢を持てるようにと願って名付けた。
 現在の会員は約45人。毎月1度、メンバーを集めて「がんサロン」を開き、最新のがん治療法や免疫などについて情報交換したり、学んだりするほか、治療や病状に関する悩みや不安を皆で共有し、患者の精神的な負担の軽減を図っている。
 藤井さんは看護師として働いていた2000年、肺がんを患う。抗がん剤治療を経て、平癒後、同病の患者たちに会の結成を呼びかけた。体力の衰えもあり、07年から会の活動に専念。しかし、10年に肝臓がんにかかり、会の活動を続けながら、病を克服した。それだけに、「治療のつらさ、入院生活の窮屈さはよく分かる」と患者への共感・理解は深い。
 従来の患者同士の意見交換にとどまらず、同会は新たな方向性を模索している。最近では、のびのびした環境で前向きにがんと闘うために、専門医同伴で森林浴に出掛け、きりたんぽ鍋を囲むなど、闘病のかけがえのないパートナーである医師との意思疎通を深めている。
 また、会の代表である藤井さんは、死やがん再発の恐怖におびえてうつ状態となり、自死を考える患者の精神状態を少しでも和らげようと、昨年4月、電話相談を始めた。「大丈夫、その道を通ったのはあなただけじゃない。希望を持って」と伝え続け、中には、後々「お陰で自殺せずにすんだ」と感謝の気持ちを打ち明ける患者もいるという。
 藤井さんは「がん患者同士の支え合いは、緩和医療にもつながると思う。こうした任意の患者会があちこちで育ち、がん患者にとって選択肢が増えれば」と願っている。