助成事業

働きながらがん治療 支援 奈良の団体「はーべすと」 =奈良

 がん患者団体などを支援する公益財団法人「正力厚生会」の今年度の助成対象に、県内からは働きながら治療を続けるがん患者を支える団体「治療と仕事の両立支援~はーべすと~」(奈良市)が選ばれた。自身もがんを患った経験を持つ辻本由香代表(57)は「がんになっても治療と仕事を両立し、豊かに暮らせるよう支えていきたい」と話す。(遠藤絢子)
 辻本さんは2011年7月に乳がんの診断を受けた。それまで就いていた会計事務所を辞め、別の職を探し始めた直後のことで、「この先の人生がどうなるのか」と不安に襲われた。
 幸い早期にがんを発見できたため、手術をして10日間ほどで退院できた。
 がんになってみて、周囲の理解を得ることの大切さや、がんになる前から備えることの大切さを痛感した。その経験から、がん患者の支援を行うようになり、17年9月に「はーべすと」を設立した。
 はーべすとの主な活動は、2か月に1回程度行っている患者同士で悩みを共有し合うサロン「がん・らふ会」と、半年に1回行う治療制度や費用などの情報を共有し合う勉強会だ。
 辻本さん自身も乳がんの診断を受けたあとにサロンに通った。ただ、開催は平日の日中がほとんど。また、年配の人が多かったため、「仕事を休んだら」と言われることも。治療と仕事の両立をあまり理解されなかった。
 そこで、18年から始めたがん・らふ会では、働きながら治療を行う患者が参加しやすいようにと、開催は平日の夜と休日に設定した。それもあってか、20~50歳代の女性が多く参加している。
 会では、「会社にどこまで病気のことを伝えるか」「残業はどこまですべきか」といった悩みについて、全員で一緒に考える。参加者からは「会社に迷惑をかけてしまうと思い、退職するつもりだったが、おかげで復帰できた」「もやもやと悩んでいたことを聞いてもらい、楽になった」といった感謝の手紙も複数寄せられているという。
 今回の助成金は、がん・らふ会の活動を普及するためのチラシ制作費や勉強会の運営費に充てる。勉強会では、県内の医者らを招き、治療による副作用や後遺症を軽くする支持療法や、がんの進行に伴う体や心のつらさを軽減する緩和医療について語ってもらう予定だ。
 辻本さんは「がん中心の生活に変えるのではなく、自分のやりたいことを無理のない範囲で続けてほしい。それができずに困っていたら、ぜひがん・らふ会に足を運んでみてほしい」と呼びかけている。
 活動に関する詳細は「はーべすと」のホームページ(http://harvest‐kansai.com/)で。