乳がん「仲間」支援の輪 助成先に選出 大山崎のサロン =京都
◆経験者が寄り添い ヨガも
「公益財団法人正力厚生会」が公募した今年度のがん患者団体助成金交付先に、府内からは「京都乳がんピアサポートサロン~fellows~」(大山崎町)が選ばれた。自身も乳がんを患った代表の吉田羊子さん(75)は、患者の不安に寄り添いながら、他の患者団体とのつながりを作る活動に力を注いでいる。(畝河内星麗)
サロンは2013年に設立。吉田さんによる乳がん患者の相談受け付けを中心に、16年からは月に一度、体への負担が少ないリハビリヨガのレッスンを開くなど、乳がんの患者や経験者同士が集まりやすい環境作りに取り組む。
ピアサポートは、同じ境遇の「仲間(ピア)」の支え合いを意味する。吉田さんは乳がんの経験者として、患者一人一人が抱える手術や治療への不安の声を丁寧に聞き、必要な行政支援や病気への正しい理解につなげている。
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吉田さんが乳がんを発症したのは08年。翌年、全身への転移を防ぐためにリンパ節を切除する手術を受けたが、生活や仕事に支障が出るほど腕に痛みが残り、再発への不安も相まって気持ちが暗くなった。
そんな時、友人から「あなたの体にもう、がんはないのよ。私と同じでしょ」と励まされたことで、「自分も何かできることをしたい」と思い立ち、12年に乳がん体験者コーディネーター(BEC)の資格を取得した。
BECは複雑化する乳がんの治療法などを正しく習得し、患者の支援につなげる役割がある。吉田さんは「自分と同じように不安を抱える患者さんの力になれたら」とピアサポーターとしての活動を始動。病院の待合室などを回ることから始め、地道に活動の幅を広げてきた。これまでオンラインや対面で延べ200人以上の相談に乗ってきた。
最近は、インターネット検索で真偽不明な情報に触れ、悲観的になる相談者も多いという。吉田さんは「がんの症状や治療法は人それぞれ。まずは『自分の乳がん』を認めることが大切」と強調する。
府内に複数あるがん患者団体との連携も進めており、今年2月には団体同士が現状や課題を共有する場として、「思いを繋(つな)ぐ患者の会」を初めて開催した。今月末にも第2回を開く予定で、吉田さんは「団体や患者同士のつながりを作れば、より密度の濃い活動ができる。今後も悩みや不安を抱える相談者さんたちと一緒に考え続けたい」と力を込めた。