スキルス胃がん 情報発信 渋谷のNPO =東京
がん患者団体などの支援活動を続ける公益財団法人「正力厚生会」(辻哲夫理事長)は、今年度の助成対象に都内から6団体を選んだ。このうち、難治性のスキルス胃がんの患者やその家族らでつくる認定NPO法人「希望の会」(渋谷区)の活動を紹介する。
◆全国で交流会開催へ
希望の会は2015年3月に発足したスキルス胃がんの患者・家族会で、会員数は遺族を含めて計約700人に上る。現在は理事長の轟浩美さん(63)が中心となって、病気に関する情報交換や情報発信、政策提言を行っている。
会を設立したのはこの病気を患い、16年8月に54歳で亡くなった轟さんの夫・哲也さん。スキルス胃がんと分かったのは13年末で、既に手術ができないほど進行していたという。
発見が難しく効果的な治療法が確立されていない上、若い人でも発症しやすいとされるスキルス胃がん。轟さんは「病の当事者家族になったことに戸惑った一方、当時は病気に関する情報がとても少なかった」と振り返る。
そこで轟さんたちは、病気について正しく理解できるよう、スキルス胃がんが疑われる症状や普通の胃がんとの違い、治療の種類などをまとめた冊子を、専門家の協力を得て作成。さらには、全国で病気について学ぶセミナーを開催したり、それをユーチューブで配信したりするなどして、スキルス胃がんについての情報を発信してきた。
最近は治療の選択肢も増えるなど、「病気の認知度が高まってきた」と手応えを感じているという。20年以降のコロナ禍で、会員らの交流会がオンラインでの開催に制限されていたため、今回得られる助成金は全国各地で開催予定の対面での交流会などの開催資金に充てる予定だ。
治療法だけではなく、治療費の支援などにはまだ課題が残る。轟さんは「ゲノム医療やAI(人工知能)を活用した診療で早期診断につなげる方法を確立し、介護保険を受けられない若い世代の患者を救済する仕組みができるよう、社会全体の理解がもっと進んでほしい」と願っている。
都内のそのほかの助成金の交付団体は次の通り。がん患者団体助成事業などへの問い合わせは、正力厚生会(03・3216・7122)へ。
▽JPoM(豊島区)▽NPO法人ソシオキュアアンドケアサポート(大田区)▽一般社団法人食道がんサバイバーズシェアリングス(中央区)▽一般社団法人日本希少がん患者会ネットワーク(千代田区)▽一般社団法人まめっつ(世田谷区)