助成事業

カウデン症候群知って 患者会に助成金 =千葉

 がん患者団体などの支援活動を続ける公益財団法人正力厚生会(辻哲夫理事長)の今年度の助成金交付先に、県内から「Cowden(カウデン)症候群当事者会ほっこり」(印西市)が選ばれた。カウデン症候群はがん化する可能性がある腫瘍や、ポリープが多発する遺伝性疾患で、20万~25万人に1人という珍しい病気。同会代表の井上奈緒美さん(58)は、「この病気のことをもっと知ってほしい」と願い、昨年6月に会を設立した。
 主婦の井上さんが異変に気づいたのは大学生の頃。講義中に「意識が途切れる」感じがした。結婚式の前日、打ち合わせの最中に周囲が薄暗くなったことも。34歳で小脳に腫瘍があるのがわかり、手術で摘出した。
 摘出後も脳の影は消えず、大学病院で「カウデン症候群の疑いがある」と告げられた。遺伝性疾患で、全身のあちこちに良性の腫瘍ができ、大腸などの消化管にはポリープが多発するという。乳がんや甲状腺がんになりやすく、井上さんもその後、両方の乳がんで全摘手術を受けた。
 多くの病院で多くの医師にかかったが、何度となく「カウデン症候群って何」と聞かれた。夜間救急外来で、おなかを押さえながら医師にレクチャーしたこともあったという。
 長男で看護師の浩幸さん(26)も同じ診断を受け、2人で患者団体を設立した。この病気のことを医師ら医療機関従事者にもっと知ってほしいのと、患者同士の交流も必要と考えたためだ。ほっこりという名称は、「病気のことばかり考えがちだが、一息入れようという思い」と井上さん。
 助成金は、急に倒れた時などに役立つ症状や経過などの記録帳作成に充てる。5月31日、6月1日に仙台市で開かれる日本遺伝性腫瘍学会で記録帳の試作品を医師に見てもらう。井上さんと浩幸さんは「意見を聴いて改訂版を作りたい」と声をそろえた。