助成事業

がん患者支援 2団体に助成 =兵庫

 がん患者団体などの支援活動を続ける「公益財団法人正力厚生会」による今年度の助成対象に、県内からは「ウェル・リビングを考える会」(神戸市須磨区)と「はまなすの会」(太子町)が選ばれた。両団体の取り組みを紹介する。
   
 ◇ウェル・リビングを考える会 神戸市須磨区 
 ◆看護師招き 情報交換 
 ウェル・リビングを考える会は、がんで母親を亡くした藤本啓子さん(72)が2005年に設立。終末期のがん患者らが過ごす施設「ホスピス」にかかわる看護師やボランティアを中心にスタートした。
 13年からは、藤本さん自身のホスピスでのボランティア経験を生かし、月1回ほど、神戸市内の喫茶店などでがん患者や家族と交流する「まちなかカフェ・がん相談室」を開催。参加者が緩和ケアの専門的な知識を持った看護師らと情報交換をしたり、患者同士で悩みを打ち明けあったりしている。コロナ禍には相談会の開催を断念した時期もあったが、多い時には10人以上の参加者が集う。
 患者の負担を減らすため、参加費は飲み物代込みで500円に設定している。今回の助成金は、アドバイザーへの謝金や会場費、相談会を周知するためのチラシや配布資料の費用などに活用する予定で、「相談会の安定的な開催に大変役立つのでありがたい」と感謝の言葉を口にする。
 藤本さんは「みな仲間に会うと『心が晴れた』と明るい顔になる。後継者を見つけ、今後も活動を続けたい」と意気込んでいる。
   
 ◇はまなすの会 太子町 
 ◆「ケア帽子」づくり注力 
 はまなすの会は、「話せて学べて助け合う」をテーマに、西播磨地域を中心に活動するがん患者会で、昨年度に続き、助成対象に選ばれた。がんサロンやヨガ、畑仕事を通じた交流を続け、治療で頭髪が抜けた人のための「ケア帽子」づくりにも精力的に取り組む。
 会は2017年に設立。急性骨髄性白血病を乗り越えた経験を持つ元看護師で代表の太田直美さん(62)を中心に、患者や家族、支援者ら35人が会員として活動している。
 がんは「治って良かったね」で終わる病ではない。抗がん剤や放射線治療、手術を経た体は発症前の状態には戻らない。周囲から「かわいそうな人」という目で見られることもあり、次第に話をしなくなる人も多いという。
 「がんサバイバーらが集い、『どう生きていくか』を語り合う場に」との思いから、太田さんが自身の退職金などを充てて22年4月に開設した活動拠点「はまなすの家」には、昨年度延べ1475人が集った。
 2人に1人はがんになる時代。太田さんは「正しい知識を持つ人が増えるよう、まだまだ頑張らなあかんと思う」と力を込めた。