助成事業

2団体助成 がん患者支援活動で =千葉

公益財団法人正力厚生会が公募した今年度のがん患者団体助成事業の助成金交付先が決まり、県内からは「アイビー千葉」と「県がん患者団体連絡協議会」が選ばれた。2団体の活動を紹介する。 
 ◆乳がん患者 親睦の場 アイビー千葉 
 乳がん体験者らによる全国組織「あけぼの会」の千葉支部として1981年に発足した。独立を経て、2010年に「アイビー千葉」と改称して以降、医療従事者に相談できる場や、患者同士で気軽に語り合える環境を整えてきた。共同代表の川本由記子さん(56)は「旅の途中で羽を傷めた水鳥が休息し、傷が癒えたらここから羽ばたく。そんな場所をこれからも提供していく」と力を込める。
 県内を中心に、乳がん経験者が親睦を深める「おしゃべり会」をほぼ毎週開く。「再発患者向け」などとテーマを絞ることもあり、境遇の近い人同士がつながる貴重な場になっている。
 専門家とともに、乳がんに関する正しい知識を学ぶ公開講座も開催している。今回の助成金を活用して5月20日に開いた講座は、キャンセル待ちが出るほど好評だった。
 乳がん患者を温かく迎える姿勢を前面に出しても、入会をためらう人は少なくない。共同代表の野村まきさん(52)も、かつてはそんな一人だった。患者として見られたくないといった意識が根底にあったからだという。しかし、勇気を出してアイビー千葉に入会したことで仲間と出会い、病気とも向き合えるようになった。
 野村さんは「乳がんだからといって『明るい未来を諦めなくていいよ』と伝え続けたい」と話している。(平田健人) 
 ◆患者支援団体が結束 県がん患者団体連絡協議会 
 改訂する冊子の中身をどうするか。イベントの内容や流れは――。県庁の多目的ホールで5月31日夜、県がん患者団体連絡協議会のメンバーが熱心に話し合っていた。
 連絡協議会は、がん患者やその家族を支援しようと、それまでばらばらに活動していた県内の複数のがん患者団体が協力し、2008年に設立した。
 医療機関との意見交換会を開くなど精力的に活動する。中でも、年に1回開催するイベント「がん患者大集合」に力を入れる。県内からがん患者が集まり、専門家が講演する。行政担当者らは政策を報告し、がん治療への知見を深めることに主眼を置く。こうしたイベントの運営や団体間の連携をスムーズにするため、月1回行っているのが県庁での意見交換だ。
 助成金は、がん患者団体の活動内容や患者の体験談を掲載する冊子「がんと生きる仲間たち」の改訂版発行に充てる予定だ。初版は、患者団体への入会のハードルを下げる狙いで17年に作成された。
 新型コロナウイルス感染拡大の影響で入会者は減少傾向にある。会長の五十嵐昭子さん(72)らは、各団体の活動をより知ってもらいたいとの思いで改訂版の発行を決めた。五十嵐さんは「前回の発行では『部数が足りない』という声もあった。より多くの人が手に取れるようにしたい」と語った。(河津真行)