助成事業

がん患者 農通じ寄り添う NPOつながりひろば =大阪

 がん患者らを支援するNPO法人「つながりひろば」(大阪市中央区)が、公益財団法人「正力厚生会」が公募した2023年度のがん患者団体助成事業の助成金交付先に選ばれた。患者や家族の相談に応じるだけでなく、農作業を通じた活動を取りいれるなどし、がんと向き合う人たちの気持ちに寄り添ってきた。
 大阪国際がんセンター患者交流棟に拠点を置く「つながりひろば」は、同センターの看護部長だった笹田友恵理事長(67)が2017年11月に設立。テーブルやイスが置かれた落ち着いた空間で、がん患者やその家族が胸の内を語ったり、お茶を飲みながら治療に関する情報交換をしたりできる。
 副作用や症状、味覚の変化に対応したメディカルレシピを紹介する毎月のセミナー「がんと栄養」や、闘病体験などを語り合う「交流会」、ウィッグの試着&撮影会などのほか、ブドウ狩りやバスツアーなど屋外でのイベントも積極的に開催。相談者を含めると、年間延べ約1500人が利用しているという。
 昨年6月からは、柏原市内に約45平方メートルの農地を借り、季節の野菜や果物を栽培する「つながりファーム」活動をスタートさせた。希望者が毎週金曜日に集まり、専門家の手ほどきを受けながら農作業に励んでいる。
 5月中旬には、帽子や手袋、長靴を身につけたがん患者らが大きく育ったタマネギを土から掘り出した。手術後の後遺症に悩まされながらも楽しみに足を運んでいる人もおり、「もう少ししたら、エンドウ豆も収穫できそう」などと会話を弾ませながら汗を流した。
 年に数回、収穫物を囲んでのバーベキューパーティーも開かれており、笹田さんは「自然の中での開放感や命を育てる喜びが、精神的な安定や希望につながっている」と話す。
 助成金は、農地のレンタル代や苗や農具の購入費、活動をまとめた冊子の印刷代などに活用する。「こうした場があることを多くの人に知ってもらい、がんと向き合う人たちの孤独感や不安感を軽減するサポートを続けていきたい」と話している。