助成事業

がん患者支援「くみサポ」助成 =広島

◆暮らしの中でみとりを 
 がん患者や家族を支援する公益財団法人「正力厚生会」の今年度の事業に、県内からは、暮らしの中でみとりができる社会を目指して活動している広島市中区のNPO法人「くみサポ」が選ばれた。(山下佳穂)
 くみサポは2014年10月に活動を開始。22年からはNPO法人として、医療・介護従事者と市民をつなぎ、相互理解を深める活動をしている。「聴くこと」と「食支援」を活動の中心とし、緩和ケア医師や言語聴覚士、歯科医師ら様々な分野の専門家を招いた講演と、市民とのグループワークを企画している。
 代表理事の泰田康司さん(56)は「家で最期を迎えたいという人は増えているが、いざその場面になって備えが全くないと慌てて情報収集をしないといけない。死や老いは必ずやってくる。どのように対処するか事前に考えることが重要」と話す。
 泰田さんの義母は03年に認知症を患い、アルツハイマー型と診断を受けた。グループホームに入所したが、自分で食事ができなくなり、21年に亡くなるまで点滴で栄養剤を入れるなどしたという。その時の経験から、「もっと何か自分にできることはあったのではないか」と思い、現在の活動を始めた。
 施設などで療養中の要介護者が、自分が好きな料理をなかなか食べられないことに注目し、17年からは「介護レストラン~あの味をもう一度~」の活動を年1回実施。ショッピングセンター内のフードコートの店舗と交渉し、食材を細かく切ったり、硬さを調節したりしながら、好きなものを食べられるように工夫する。
 「外食したい」との願いをかなえるため、ケアマネジャーや理学療法士らと協力しながら、約半年かけて準備する。「ペースト食だった人が、すしやステーキを食べられると、目が輝き、表情が生き生きする」という。当日は、食事介助や介護のトレーニングを受けた市民ボランティアも参加し、好きな料理についての思い出を聞きながら、食事中の会話を楽しめるようサポートしている。
 泰田さんは「誰もが迎えるみとりを自分ごととして考えてほしい。専門家の講演や交流を通じて、地域の中に知識を持った人を増やし、支援が行き届くようにしたい」と意気込む。