助成事業

がん治療・仕事 両立目指す 品川のNPO =東京

 がん患者団体などの支援活動を続ける「公益財団法人正力厚生会」(辻哲夫理事長)は、今年度の助成対象に都内の8団体を選んだ。このうち、品川区のNPO法人「ピュアスマイルスタジオ」の取り組みを紹介する。
 がん経験者が、治療と仕事を両立できる社会の実現を目指す。
 理事長を務める下沢純子さん(57)自身も、2019年に乳がんと診断された。保険会社に営業手法を指導する個人事業主だったが、病状を伝えると企業側から「いいから休んで」と仕事を断られたという。SNSで同様の経験をした人が大勢いることを知り、「企業は『がんになると仕事ができない』という間違ったイメージを持っている。がん患者と企業が歩み寄れる場を作りたい」と21年11月に団体を設立した。現在の会員は50人を超える。
 がん経験者がヨガやレザークラフトなどの体験教室の講師となり、教室開催のノウハウを学びながら副収入を得られる仕組みを作った。一方で、真の両立には「企業側の意識を変える必要がある」とも考え、正力厚生会に資金面で支援を求めた。下沢さんは「これで企業支援が進められる」と喜ぶ。
 助成金を活用し、今月から企業向けの勉強会を開いていくという。社会保険労務士が両立支援の基礎知識や環境整備をわかりやすく教えるもので、11月には集大成としてシンポジウムを開き、先進的な企業などによる講演も行う予定だ。
 「企業側の理解を深めることで、『今日は治療だから休みます』『いってらっしゃい。頑張って』と当たり前に言える関係を作りたい」と語る下沢さんは今後、がん患者の子どもの学びを支える活動も始めるつもりだという。
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 助成金の交付団体は次の通り。がん患者団体助成事業などへの問い合わせは、正力厚生会(03・3216・7122)へ。
 ▽NPO法人ピュアスマイルスタジオ(品川区)▽がんフォト*がんストーリー(杉並区)▽NPO法人ソシオキュアアンドケアサポート(大田区)▽認定NPO法人希望の会(渋谷区)▽ピアサポート「川上泉の会」(中野区)▽一般財団法人在宅がん療養財団(目黒区)▽認定NPO法人ゴールドリボン・ネットワーク(豊島区)▽膵臓(すいぞう)がん患者と家族の集い(大田区)