助成事業

タオル帽子 がん患者へ 岩手ホスピスの会に助成 =岩手

 がん患者や家族を支援する公益財団法人「正力厚生会」が公募した今年度の助成事業で、県内からは、抗がん剤治療の副作用による脱毛に悩む患者のために、「タオル帽子」を製作している「岩手ホスピスの会」(盛岡市)が選ばれた。
 同会は、2002年にがん患者や家族らで結成された。当時、県内に患者の苦痛や恐怖を和らげるホスピスのような施設はなく、妻をがんで亡くした川守田裕司代表(66)が、「患者の痛みを和らげる医療が広まってほしい」と思い、会の設立を呼びかけた。現在の会員は約220人。
 帽子作りは、吉島美樹子事務局長(61)が、脱毛で苦しむ患者の家族から相談を受けたことがきっかけで、08年に始まった。吉島さんも、かつて血液のがんである悪性リンパ腫の治療で髪の毛が抜けた経験があった。
 そこで、通気性の良いタオル製の帽子を思いついて試作したところ、「人のぬくもりを感じられて安心する」などと好評だったため、本格的に製作を開始。現在までに11万個以上のタオル帽子を全国の病院に届けた。クリスマス前には、約50か所の病院から寄せられる計3000個の依頼に対応。また、県内の高校や婦人会などに会員を派遣し、帽子作りの講習会を開いている。
 今月13日も、10人ほどのボランティアが、盛岡市の総合福祉センターでタオル帽子作りを行っていた。会員たちは、慣れた手つきで針を動かし、一つ一つ丁寧に縫い上げていた。「患者が必要とする限り続けていきたい」と吉島さん。川守田さんは「60歳代以上が活動の中心となっている。若い世代にも広めていけたら」と願っている。