助成事業

2団体助成 がん患者支援活動で =愛知

 公益財団法人正力厚生会が公募した2022年度がん患者団体助成事業の助成金交付先に、県内からはNPO法人「ミーネット」(名古屋市中区)と一般社団法人「仕事と治療の両立支援ネット―ブリッジ」(同市千種区)が選ばれた。2団体の代表者にこれまでの活動内容や今後の抱負などを聞いた。
 ◆治療体験者が相談対応
 ◇ミーネット(名古屋市) 
 2004年設立。がんになっても安心な街づくりを目指し、がん患者や家族らの相談にがん治療の体験者が応じる「ピアサポート」活動などを展開してきた。09年から名古屋市と協働で「がん相談・情報サロン ピアネット」を運営し、対面や電話、オンラインで相談を受け付けている。このほか、県内のがん診療連携拠点病院で定期的にピアサポートを実施している。
 また、07年からはピアサポーターの養成講座を始め、21年までに279人が修了した。専門医らによる講義のほか、相談対応の模擬演習、病院での相談実習など約90時間にわたって学ぶ。
 ピアサポーターの養成は全国的に進みつつあるが、個人情報の保護や、医師の判断が必要な治療方針に介入しないなど、研修に活用できる具体的で分かりやすい教材が求められているという。
 このため、今回の助成金を活用し、安全で安心なピアサポートを行うための動画とガイドブックを作る。ピアサポートによる問題対応の事例を示し、患者や家族、自分自身にどのような影響を与えるかなどを解説する。年内にもインターネットで公開する予定だ。
 理事長の花井美紀さん(69)は「危険な対応を避けるルールと技法を身につける教材として、広く活用してもらいたい」と呼びかけている。
 
 ◆保障制度 動画で解説
 ◇仕事と治療の両立支援ネット―ブリッジ(名古屋市) 
 大きな病気になった人が仕事と治療を両立できる社会の実現を目指し、2012年から活動を始めた。中心メンバーはキャリアコンサルタントの5人。医療機関と連携し、患者への相談支援だけでなく、必要に応じて企業と働き方に関する調整などを行っている。
 新型コロナウイルス禍で多くの人が集まる催しが難しくなったこともあり、仕事を持つがん患者ら向けに、社会保障制度について解説する動画を作り始めた。
 21年度は「これから治療と向き合うあなたへ」と題し、総論的な動画1本と、高額療養費制度など具体的な制度を紹介する動画3本を制作。動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開中だ。今年度は助成金を使って、「休職中の収入が気になるあなたへ」をテーマに、傷病手当金などの制度を説明する動画を加えたい意向だ。
 ブリッジは昨年、がんと診断された際に就労していた約200人を対象に、インターネットでアンケートを行った。勤務先から傷病手当金について説明された人は30%、高額療養費制度は26%、会社独自の給与保障制度は8%だった。
 代表理事の服部文さん(51)は「勤務先から制度に関する情報が十分に伝わっていない実態がある。今後も就労中のがん患者が必要とする制度を活用できるよう動画を制作していきたい」と話している。