助成事業

3団体に助成=神奈川

がん患者や家族を支援する「公益財団法人正力厚生会」の今年度の助成金の交付先が決まり、県内では横浜市神奈川区の「ハートリボン」、川崎市中原区のNPO法人「Hope Tree」、茅ヶ崎市の「ガーゼ帽子を縫う会」がそれぞれ選ばれた。3団体の活動を紹介する。
 
 ◆乳がんのママ 悩み共有 
 ◇ハートリボン(横浜市神奈川区) 
 乳がんになった母親が孤独に陥らないようサポートしようと、自身の体験を基にして西尾愛さん(36)と阿比留亜佐美さん(33)が2019年5月に設立。会の名称に「ハートにリボンを付けて心を癒やしましょう」との思いを込めた。西尾さんは「同じ悩みを話せる相手がいなくて、つらい思いをした。誰かに話すことで少しでも心が軽くなれば」と語る。
 新型コロナウイルスの感染防止のため、対面式のイベントは企画できないが、現在はオンライン形式で漢方薬、薬膳料理、無農薬野菜、ヨガなどに関する勉強会を開いている。これまでに患者ら100人ほどが参加している。
 口コミやSNSに頼っていた活動内容のPRについては、6月からホームページを開設し、チラシも作成して病院に置くなど積極的に展開して仲間を増やそうと張り切る。
 
 ◆遺児の声まとめ冊子に
 ◇Hope Tree(川崎市中原区) 
 大沢かおり代表(55)が2008年に設立し、15年にNPO法人として認証を受けた。乳がんになった患者と、その子どもの支援に奔走している。
 20年前、自身の乳がんが判明。当初は別の支援団体に患者として参加していたが、運営を手伝う中で米国を訪れ、患者や家族らをサポートするプログラムを知った。がんで親を亡くした子どもの接し方に悩んでいた頃で、取り組むべき活動への基盤とした。
 以来、講演会やワークショップなどを通して参加者に寄り添っている。2年前には、がんと聞かされないまま家族を亡くした子どもたちの声をまとめた冊子を作成し、1000部ほどを病院や患者に寄贈した。
 子どもに自分の病気を伝えることをためらう親もいるが、大沢代表は「家族の一員として尊重して話すことで、きずなを深められると思う」と呼びかける。
 
 ◆患者と楽しく帽子製作
 ◇ガーゼ帽子を縫う会(茅ヶ崎市) 
 「ガーゼの帽子をツールとして、患者のコミュニティーをつくりたい」と吉田久美代表(55)が2010年に設立した。
 乳がんが見つかったのは14年前。手術も受けたが、治療で最もつらかったのが脱毛などの外見の変化だった。「がんと向き合う患者の心と体を少しでも和ませたい」と帽子作りを考案。素材には柔らかく夏も涼しく着用できるガーゼを採用した。現在は横浜市のカフェで月1回、患者やその家族らが集まり、おしゃべりを楽しみながら製作に取り組む。病院や学校、オンラインでも活動している。
 18年からは子ども用の帽子を全国の医療関係施設に寄付。活動は広がり、昨年は埼玉県などに支部を設置した。帽子の作り手は30人ほどに増えて、寄付数は800枚を数えた。吉田代表は「助成は本当にありがたい。ガーゼを購入する資金に充てたい」と語る。