助成事業

苦悩のがん患者 包む帽子 敦賀のグリーフケア福井 =福井

◆タオルで作り寄贈

 がん患者団体の活動を支援している公益財団法人「正力厚生会」の今年度の助成金交付先に、県内からは「グリーフケア福井」(敦賀市松原町)が選ばれた。抗がん剤の副作用で頭髪の脱毛に苦しむ患者向けに、タオルを使った「タオルケア帽子」を作り、病院に届ける活動などに取り組んでおり、代表の山崎純子さん(61)は「組織を充実させ、多くの人に活動を知ってもらいたい」と話している。(斎藤孔成)

 グリーフケア福井は2013年6月に設立された。福井市内の県民健康センターと、敦賀市福祉総合センター「あいあいプラザ」でそれぞれ月に1回、会合を開き、がん患者の家族や、がんで家族を亡くした人ら県内の10~15人が参加して、苦しみや悲しみを分かち合っている。
 山崎さんは06年に長男(当時23歳)を交通事故で亡くしており、「当時は食べることができず、2か月で15キロもやせた」と振り返る。悲嘆(グリーフ)から立ち直りたいと、一般社団法人「日本グリーフケア協会」の講座に参加した。11年には同協会認定の特級アドバイザーとなり、講演活動などに取り組み始めた。
 一方で、10年に見つかっていた自身の乳がんで、十数回の入退院を繰り返し、がん患者の会に参加するように。多くのがん患者やその家族と知り合い、苦悩する姿を見てきたという。
 タオルケア帽子の作製に取り組み始めたのは、抗がん剤治療で自身も髪が抜けたことがきっかけだった。グリーフケア福井の会合では、参加者らがそれぞれ作製した帽子を持ち寄り、県内の病院に贈る活動を続けている。
 山崎さんは「がんになると、『1人で病気と闘うというつらい思いをわかってもらいたい』『誰かに聞いてもらいたい』という気持ちになる」と語り、「家族も『なぜ早く気付いてあげることができなかったのだろう』と自分を責めてしまうこともある」と話す。
 「だからこそ、つらい気持ちをはき出して、分かち合い、話し合える人や場所、時間を増やしていくことが必要だ」と言い、今後はホームページを作成するなどして、組織づくりを進めようと考えている。