がん患者支援2団体 助成 =福岡
公益財団法人正力厚生会が公募した、2021年度のがん患者団体助成事業の助成金交付先に、県内からはいずれも福岡市の「NPO法人スマイルハート」と「血液疾患を考える患者家族の会『リボンの会』」の2団体が選ばれた。
◇「スマイルハート」
◆交流し語り合う場提供
乳がん患者である橋口絵里奈さん(40)が2019年10月、インスタグラムで患者会などの支援活動を始め、20年3月に法人化した。がん患者とその家族がインターネット上で語り合う「オンラインカフェ会」や、ドレスで着飾った女性患者の撮影会などを行っている。
橋口さんは15年6月にがんが判明。抗がん剤などで治療後、乳房の全摘出・再建手術を経験した。当初は笑うことさえできず、将来を悲観する日々だった。
心の支えとなったのは同じ病室の女性患者たちだった。不安を語り合い、たわいのない話で笑い合うことで心が軽くなった。「がん患者が自分を取り戻せる場を提供したい」と一念発起し、活動のために18年に会社を退職した。
カフェ会は昨年8月から1か月に数回実施。学生が進行やゲームの企画など運営ボランティアを務める。5月26日は国内外の14人が参加。司会の福岡大3年大渡春輝さん(21)は「交流を通じて心の壁をなくすことができた」と話した。
橋口さんは「がん患者と社会との懸け橋になり、孤独感で悩む人を一人でも多く救いたい」と改めて誓う。
◇「リボンの会」
◆白血病の情報・経験共有
代表を務める宮地里江さん(76)の長男は約30年前、白血病と診断された。「情報が少ない中、命と向き合って本音で語り合える場をつくりたい」と思い、1993年に会を設立した。
会員は白血病などの血液疾患の患者や家族約600人。年3、4回、交流会や医師を招いて講演会を開催するほか、メールや電話での相談も行っている。
新型コロナウイルスの影響で直接会うことが難しい中、SNSでの情報発信やオンライン交流会なども企画。15~40歳未満のがん患者「AYA世代」への支援にも力を入れている。
19歳の時に白血病と診断されたスタッフの蒔田真弓さん(30)は、「ネットで全国とつながり、患者目線で情報を伝えたい」と話す。蒔田さんは自身の経験も生かし、抗がん剤などの副作用で抜け毛に悩む患者のために、気兼ねなく通える美容室の情報などを発信することに意欲を燃やす。
宮地さんは「話し合うことで気持ちが軽くなり、生きるヒントが見つかるかもしれない。悩みを抱え込んでいる人を、会は誰も取り残さない」と力を込めた。