助成事業

がん患者支援4団体助成 =宮城

 がん患者団体を支援する公益財団法人「正力厚生会」の2021年度の助成金交付先が決まった。県内から「ホッとサロンとめ」(登米市)、「すい臓がん患者と家族のおしゃべりサロンぶどうの木」(塩釜市)、「POFF(ぽーぽいフレンズふくしま)」(仙台市青葉区)、「日和山カフェ」(石巻市)の4団体が選ばれた。患者や家族に寄り添う各団体の活動を紹介する。
 
 ◆ウィッグ貸し 笑顔咲く 
 ◇ホッとサロンとめ(登米市) 
 代表の鈴木玲子さん(59)は2007年に子宮がんと診断された。恥ずかしさから誰にも打ち明けられず引きこもるように。そんなとき、石巻市でがん患者が集まるお茶会の紹介記事が目にとまった。「同じ境遇の人になら話せるのでは」と参加してみると、笑顔で語り合う明るい空間が広がっていた。
 登米市にも同じがん患者の交流の場を作ろうと、10年から月1回の「茶話会」を主催している。毎月15人ほどが訪れ、症状や悩みを打ち明ける。落語や音楽会も開催。病気のことばかり考えず、笑顔になってもらおうという願いからだ。
 4年ほど前からは、抗がん剤の副作用で脱毛した女性向けにウィッグの貸し出しを始めた。つけている人の表情や姿勢は明るい。
 鈴木さんは「会を通して一人ではないんだと実感してもらい、とにかく笑顔で生きてほしい」と活動の継続を誓う。
 
 ◆オンラインでの集いも 
 ◇すい臓がん患者と家族のおしゃべりサロンぶどうの木(塩釜市) 
 代表の浜端光恵さん(50)は、2018年に膵臓(すいぞう)がんの診断を受けた。「悩みを共有したり、気軽に話したりできる居場所がほしい」と思う反面、健康な人に病気を打ち明けて気を使われるのも気が引けた。
 昨年1月、膵臓がんの患者同士が語り合える団体を設立。カフェなどで楽しくおしゃべりするサロンを開いている。新型コロナウイルスの影響で開催は月に1回程度にとどまる。そこで、SNSで情報を発信し、今は他県の患者も交え、オンラインでのサロンの開催も試みている。
 助成金は、会員の写真撮影会などに充てる。サロンで楽しく過ごす患者やその家族の様子を写真に収め、写真展を開く予定だ。浜端さんは「膵臓がんは治らない病気というマイナスイメージを払拭(ふっしょく)し、患者が希望を持てることを知ってほしい」と力を込める。
 
 ◆甲状腺検査 相談の場を 
 ◇POFF(ぽーぽいフレンズふくしま)(仙台市青葉区) 
 東京電力福島第一原発事故当時、18歳以下だった福島県在住者を対象に行われている甲状腺検査について、専門家に相談できる場を提供している。
 この10年間で検査対象者約38万人のうち256人が、「甲状腺がんまたは他のがん」の疑いと診断された。この中には、手術をしなくてもよいがんまで見つかる過剰診断の可能性が指摘されている。
 代表の宮城学院女子大の緑川早苗教授(53)は、甲状腺がんと診断され、手術痕に悩んだり、就職や結婚をする際に差別を受けたりする若者たちを目にしてきた。
 「検査について正しく知ってもらおう」と、2020年1月に団体を設立。今後、検査の疑問などに答えるパンフレットを作成し、学校などに配布して周知を促していく。「若者の悩みに寄り添い、疑問に答える場をつくっていく」と意気込む。
 
 ◆「いつもそばに」伝える 
 ◇日和山カフェ(石巻市) 
 代表の佐藤京子さん(65)は、石巻赤十字病院の看護師時代、がん患者や遺族が不安や喪失感を抱えて過ごす様子を見てきた。同じ境遇の人が気軽に語り合える場をつくろうと、早期退職して2018年1月に団体を設立した。
 新型コロナウイルスの感染拡大で昨年2月に休止するまで月に1回、石巻市内で定期的に「語りの場」を開催。19年度は延べ138人の参加があった。
 初めて参加した膵臓(すいぞう)がん患者の女性は、泣きながら語り始めた。「治療方法が見つからない」と医師に告げられたこと。周囲に病気を打ち明けられないこと......。寄り添ってもらえた安心感からか、「こんなふうに話せる場があって本当に良かった」と言ってくれた。
 石巻赤十字病院の医師や看護師らがボランティアで活動を支えてくれる。「私たちはいつもそばにいるよ、一緒に歩もう、と伝えていきたい」と語る。