助成事業

2団体助成 がん患者支援活動で =北海道

 公益財団法人正力厚生会」が公募した2021年度がん患者団体助成事業の助成金交付先に、道内からは「NPO法人おはな」(恵庭市、石上一美代表理事)、「北海道肺がん患者と家族の会」(札幌市東区、内山浩美代表)が選ばれた。
 
 ◆講座や催し 憩いの場提供 
 ◇NPO法人おはな 恵庭市
 「がん患者や家族、遺族が集える場所を持ちたい」と昨年4月、NPO法人「おはな」を作った。気軽に集えるサロンを月1回、恵庭市内の複合施設「えにあす」で開催。3か月ごとにミニコンサートやヨガ講座なども一緒に開催する。目指すのは誰でも憩える居場所づくりだ。
 代表理事の石上一美さん(50)は19年前、父をがんで亡くした。子育てに悩んでいた時期でもあり、一人で苦しんだという。6年ほど前、「一人で抱えこまず、教育や生活の悩みも分かち合いたい」と仲間とともに任意団体を作った。その活動の経験から、行政機関や市民の理解を得られやすいと今回新たに作ったNPOが、おはなだ。
 ハワイ語で「仲間」を意味する「Ohana」から名づけた。「花のまち恵庭にあるからではないですよ」と石上さんはほほ笑む。
 がん患者の化粧講座も時折開く。「患者は薬の副反応のせいか、肌がくすみがち。メイクで前向きになってもらいたい」からだ。
 年1回は医師らを招き、行政機関とともにがん啓発イベントも開いている。正力厚生会の助成金は講座などの開催経費や、計画中のオンライン相談システム構築などに充てるつもりだ。
 新型コロナウイルスの影響でひきこもりの人も増えている。がんに限らず、心のケアを必要とする人たちの活動も今後広げていきたい。「血縁がなくとも固く結ばれた仲間と話し合い、教育問題、社会問題の解決につながればうれしい」と語る。
 
 ◆患者の悩み共有 闘病ケア 
 ◇北海道肺がん患者と家族の会 札幌市 
 肺がん患者を支援している「北海道肺がん患者と家族の会」は2014年に設立された。会員数は5月19日時点で13人。自身もがんの治療を続ける内山浩美さん(56)が代表を務める。
 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、同会はウェブ会議システム「Zoom(ズーム)」を使った患者会などを実施している。患者が抱える治療中の悩みを共有したり、家庭でできる体や心のケア方法を医師に質問したりできる。
 内山さんが肺がんを告知されたのは07年10月頃で、当時は中学生と高校生の息子、小学生の娘を抱えた3児の母親だった。子供たちの将来に不安を覚えながらの闘病生活を支えてくれたのは、入院先で同じ病室だった女性のがん患者だった。
 女性にも子どもがおり、年齢も同じ。治療による脱毛などの悩みも語り合い、「一人じゃないんだ」と前向きになれた。同じ立場の人と悩みを共有することで心が平穏になる。この経験が今も同会の活動を続ける原動力となっている。「活動を通して、落ち込んでいた患者さんが笑顔になるとうれしくなる」。内山さんは、やりがいをこう語る。
 助成金は、会の活動内容を紹介する案内の制作費などに充てる予定だ。案内はがん患者のいる市内の病院などに配る。
 ウェブ会議システムの患者会には、ネット環境のない高齢患者が参加できない。「新型コロナの感染が終息したら、患者同士が顔を合わせて語り合う患者会を再開させたい」と願う。