助成事業

がん体験 語り伝える 石岡の団体に助成金 =茨城

 公益財団法人「正力厚生会」が公募した2020年度がん患者団体助成事業の助成金交付先に、講演を通じて啓発活動に取り組む「茨城がん体験談スピーカーバンク」(石岡市)が選ばれた。代表の志賀俊彦さん(44)は「がん体験を人々に語り伝えていくことで、社会の健康に対する意識の醸成や医療の発展に貢献したい」と話している。

 がん患者が体験談を社会に発信していくことを目的に、有志約10人が16年5月に設立。現在約30人が登録し、県内の小中高校や医療機関、企業などで、がん体験をわかりやすく講演している。水戸市福祉ボランティア会館で月1回の定例会を開き、メンバー同士で模擬発表会を行ったり、元アナウンサーを講師に発声訓練をしたりして技術の向上を図っている。

 志賀さん自身、01年9月に肝臓がんが判明した。様々な治療を受け、現在は症状が安定する「寛解」の状態が続いている。そんな中、16年に体験談の語り手募集と、子育て世代のがん患者支援団体の活動を知り、その前向きな活動に触発されて、自らも語り手になることを決意したという。

 「メンバーの体験談は30人いたら30通りで、価値観もみな違う。でも、『生きることの大切さ』を共通のメッセージにしている」と志賀さん。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、講演会や定例会は休止中だが、体験談へのニーズは年々高まっており、「感染症収束後にまた、意欲的に活動していきたい」と語った。