がん患者手記集贈る 市教委に サロンネット熊本=熊本
県内のがん患者や家族でつくる交流組織「がんサロンネットワーク熊本」が、患者らの体験を集めた手記集「がんとともに生きる」を制作し、11日、熊本市教育委員会に寄贈した。市内の小中学校や市立高校など計138校に2冊ずつ配布する。自身も腎臓がんなどを患った同ネットワーク代表理事の園田一夫さん(59)は「検診で早期発見すれば楽に治療ができる。偏見を持たずに、がんという病気を理解してほしい」と話している。
手記集は、患者の交流やがんの啓発などに取り組む同ネットワークが「患者の生き方を共有し、病気に対する共感や検診率向上に寄与したい」と制作。A4判29ページで、がん患者やその家族計約50人(10~80歳代)の手記が収められている。
がん患者の支援などに取り組む公益財団法人「正力厚生会」(東京都)が制作費の一部を補助し、昨年12月に完成した。約1500部を印刷し、県内の病院や患者に配布している。
「がんを経験した者として一番言いたい事は、ぜひ検診を受けてほしい、それに尽きます」。園田さんは、こう手記につづっている。
園田さんは43歳の頃、腹痛で検診を受けた際に腎臓がんが発覚。その後に骨髄性白血病や前立腺がんも患っていることが分かったが、いずれも早期発見だったため、飲酒を楽しむなど生活に支障はない。現在も投薬治療は続けているが、「がんは決してこわい病気ではない。早期で見つかれば、身体も楽に、安価で治療できる」と強調する。
つらいエピソードも並ぶ。
大腸がんを患う30歳代の女性は、体の異変に気づきながらも受診を怠っていた経験をつづった。最もがんが進行した「ステージ4」を宣告され、「なんでもっとちゃんと自分の体を知ろうとしなかったんかな」と悔しさを込めた。
この日の贈呈式では、園田さんが、遠藤洋路教育長に手記集を手渡した。市教委は「がんに対する子どもたちの理解を深めるために活用したい」とし、各学校の保健体育の授業などで活用するという。