助成事業

3団体に助成 がん患者支援に尽力=神奈川

 がんの患者団体を支援する活動に取り組む公益財団法人「正力厚生会」(辻哲夫理事長)が公募した2019年度助成事業の交付先が決まった。県内からは一般社団法人「ピアリング」(横浜市青葉区)、「聖マリアンナ乳がん体験者の会 マリアリボン」(川崎市宮前区)、公益社団法人「日本オストミー協会神奈川支部」(厚木市)が選ばれた。3団体の活動を紹介する。

◆女性向けSNS運営 

◇一般社団法人「ピアリング」(横浜市青葉区) 

 ともに乳がんを経験した上田暢子さん(47)と彩田ゆう子さん(40)が2017年6月に設立し、女性がん患者向けの交流サイト(SNS)「ピアリング」(https://peer‐ring.com)を運営している。登録会員は2400人を超え、投稿数も月間2万件に達するほどに裾野が広がった。

 上田さんは闘病中にブログを始め、体験者同士による支え合いの必要性を感じた。各地の患者会にも参加したが、「忙しい中で、決まった時間や場所に集まるというのはハードルが高かった」という。

 そこで、「時間や場所を選ばずに交流できる」と考え、同じ病院で手術を受けた彩田さんと運営を始めた。告知から手術までの間の動揺や、仕事をどう続けるかなどの悩みに、会員同士がコメントでやりとりし、不安解消に役立てている。

 昨年から会員同士が顔を合わせるセミナー「笑顔塾」を実施。この笑顔塾を地方で開こうと、助成金を申請した。6月に大阪と名古屋での開催が決まり、仙台と福岡でも計画中だ。

 「1か月前には泣いていたのに、皆さんどんどん元気になっている。同じ立場で頑張ろうと言える人がいることが、力になるんです」と2人は強調した。

◆乳がん不安 共有の場

◇「聖マリアンナ乳がん体験者の会 マリアリボン」(川崎市宮前区) 

 病気を抱え、途方に暮れる乳がん患者らに少しでも寄り添えたらと、聖マリアンナ医科大学病院で乳がんを経験した3人が共同代表となり、2013年に会を発足した。

 主に体験談などを共有して不安や疑問を解消する毎月の「おしゃべり会」や同病院の医師による乳がん治療に関する勉強会、クリスマス会などの催しを開いている。これまでに延べ約3200人が参加した。

 共同代表の久米陽子さん(60)は「闘病中は孤独と不安の中、同じ仲間と語り合うことで気持ちが和らぎ、前向きになれた」と振り返り、「特に再発の時には仲間たちの支えで乗り越えることができた」と語る。

 活動はすべて手弁当で、資金に余裕はない。正力厚生会からの助成は今回で3回目。これまでパンフレットの作成や外部講師を招いての勉強会、患者らの相談に応じる「ピアサポーター」の研修などに充ててきた。

 今年は外部講師の招請のほか、パンフレットの刷新などを予定している。岩沢玉青さん(48)は「助成金で活動の幅が広がり、組織として成長できた」と喜び、堀内美保さん(50)は「(助成決定は)活動が認められた気がしてうれしかった。これからも地道に活動していきたい」と話している。

◆オストメイト 術後ケア

◇公益社団法人「日本オストミー協会 神奈川支部」(厚木市) 

 人工肛門や膀胱(ぼうこう)を利用するオストメイトの患者やその家族らが1989年に設立。健康相談会などを毎月1、2回、県内各地で開催し、患者の術前術後の不安軽減や心のケアに力を入れている。2014年、県内の入浴施設でオストメイトが入浴を拒否されたことを機に、一般の人への啓発も活動の柱にしている。

 支部長の須田紗代子さん(71)は26歳の時に潰瘍性大腸炎で手術を受け、人工肛門となった。副支部長の牛尾幸子さん(73)は卵巣がんで4回手術し、開腹のたびに大腸が癒着して人工肛門に。須田さんは「病気だけでも大変なのに、私たちは病後のつらいケアが待っている」と話す。

 ストーマ装具と呼ばれる器具は改良が進み、プールや浴場で利用しても支障はないが、無理解による偏見や差別は後を絶たない。かつては器具に慣れるため3か月ほど入院していたが、最近は術後2週間ほどで退院するため、器具の使用法への助言も行う。

 会員は1歳児から101歳まで388人だが、最近は若者の入会が少ないのが悩み。須田さんは「同じ境遇の人たちと会い、話す中で得られることは多い。こうした経験を伝えていきたい」と話している。