助成事業

がん患者支援者養成団体に助成=大阪

◆経済・社会的対応 看護師らに講義  代表理事・川崎さん「悩み解決へ活動工夫」
 公益財団法人「正力厚生会」が公募した2018年度の助成金交付先に、がん患者の様々な悩みに応える支援者を養成する一般社団法人「がんライフアドバイザー協会」(大阪市西区)が選ばれた。代表理事の川崎由華さん(40)は「活動の発展に助成金を活用し、少しでも多くの悩みを解決したい」と話す。(松久高広)


 協会は、看護師や介護福祉士、薬剤師らを対象に、支援者(がんライフアドバイザー)の養成講座を開いている。修了した人たちは、自分たちの職場に帰り、がん患者の悩み相談にのる。
 協会が支援で最も大切にしているのは、身体・精神的苦痛の解消にとどめないことだ。支援者は社会保障や相続にかかわる法制度、民間保険の使い方についても知識を得ており、「医療費がいくら必要なのか」「治療と仕事を両立できるだろうか」などの悩みにも助言できる。
 資格取得者は全国に約50人いて、現時点で25人が受講中だ。
 協会設立のきっかけは川崎さんの両親が、がんを宣告されたことだった。製薬企業の社員として、医療者にがん治療薬の情報提供をしていた経験もあり、「治療法が増え、がんと付き合いながら暮らす時代になった今、経済的支援も重要だ」と気づいたという。
 2013年夏、経済的支援の必要性を理解してもらおうと府内や兵庫県の病院を回ったが、話を聞いてもらえる機会は多くなかった。
 兵庫医科大病院(兵庫県西宮市)で、余命宣告を受け、民間保険の生前給付を受けるか悩んでいた患者の相談を受けたのをきっかけに、14年からこの病院を拠点に活動を進めた。
 16年には、川崎さんの思いに賛同した医療従事者8人と協会の前身になる団体を設け、翌年に一般社団法人として出発した。
 自分の医療費がかさむことで子どもの学費が捻出できずに悩む、母親の相談を受けたこともある。こうした場合も、活用できる制度を示して、治療の見通しをしっかりと伝えれば不安は解消するという。
 川崎さんは「社会的、経済的な苦痛を解消することも大事な治療の一つ」と強調。「治療に向き合うなか、患者が相談のきっかけを見つけるタイミングは様々。時機をうまくとらえて悩みに応えるためにも、活動に工夫を凝らしたい」と話す。