助成事業

西宮のがん患者団体 助成 食事会や下着手作り=兵庫

 公益財団法人正力厚生会」が公募した2018年度がん患者団体助成事業の助成金交付先に、当事者らでつくる団体「がん・ピアサポート Camomille(カモミール)」(西宮市)が選ばれた。闘病中の悩みを打ち明け合う食事会などを開いており、先月には乳がんの手術を受けた女性が快適に着用できる手作りブラジャーを製作する体験会を初めて実施。伊勢上(いせがみ)雅世代表(46)は「助け合い、励まし合う活動の輪を広げたい」と話している。(長野祐気)
 伊勢上さんは10年に悪性リンパ腫と診断され、胸にも11センチの腫瘍が見つかるなどして芦屋市の病院に入院した。「抗がん剤治療がつらい」「体がだるい」。家族に心配をかけまいと抱え込んだ思いを打ち明けたのは、同室でがんの治療を受けていた高齢女性だった。
 半年で寛解した後、その女性の見舞いに行くと、「私は思い残すことはないけど、あなたは頑張って生きてね」と言われた。間もなく亡くなった女性に入院中、励ましてもらったことを思い出し、今度は自分が苦しんでいるがん患者を支えようと、12年に体験などを記したブログを開設。2か月に1度、患者や元患者を集めた食事会も始めた。
 より幅広い人に参加してもらおうと、15年に同団体を設立。昨夏、がん患者らの会合に出席した際、乳がん手術で胸の形が変わったという女性から、「市販のブラジャーは使いにくい」との悩みを聞いたことから、手作りブラジャーの製作を思い付いた。
 早速、裁縫や美容の知識がある知人に相談し、肩ひもやワイヤを使わず、胸の前でリボンで結んで固定する仕組みの試作品を完成。先月13日に初めて大阪市で製作体験会を開くと、がん患者や看護師らが参加し、「着けると気持ちが明るくなりそう」と好評だったという。
 助成金を活用して今年度中にあと4回、体験会を実施する予定で、次回は7月7日の開催を計画中。参加者の声を聞きながら、ブラジャーの改良も進めるつもりだ。
 伊勢上さん自身もがんの再発や転移の不安があり、検査を受け続けているが「これからも、がん患者が気兼ねなく悩みを打ち明けられる場を提供し、役立つイベントも開きたい」と言葉に力を込めた。