助成事業

乳がん患者気軽に入浴=奈良

 公益財団法人「正力厚生会」が公募した2016年度がん患者団体助成事業の助成金交付先に、乳がん患者の入浴着の開発・普及に取り組む「奈良県の医服を考える会」が選ばれた。現在は試作を進めており、元患者で代表の中西恵理さん(44)は「手術痕が気になって公衆浴場に行けない苦しみをなくしたい」と意気込む。(山本哲生)

 中西さんは、国保中央病院(田原本町)で看護師として勤めていた2009年、36歳で左胸に乳がんが見つかり、全摘手術を受けた。1年近く後に仕事に復帰し、昨年4月からは畿央大(広陵町)の健康科学部看護医療学科で助手を務めている。

 昨年10月、がん患者が集うイベントで、運営スタッフから「市販の入浴着はおしゃれなものが少ない。若い女性が着けられるものを作れないか」と相談を受けた。間もなく、「考える会」を結成した。

 メンバーは同学部人間環境デザイン学科の村田浩子・准教授、村田ゼミの学生、乳がん患者会「あけぼの奈良」の女性ら10人。2か月に1回、畿央大で例会を開催。学生たちが、ストッキングやポリエステルの布など様々な素材で入浴着を試作し、メンバーで使い心地や見栄えなどについて意見を交わしている。

  「縫い目が傷に当たって痛い。接着加工で縫い目をなくせないか」「ボタンより接着テープを使った方がいい」「ベージュの色合いが肌になじむ」。例会の議論は活発だ。学生らは夏休みの間、複数の試作を進めており、10月頃には試着した患者らにアンケートをして、最良の素材とデザインを決めたいという。

 正力厚生会の助成金20万円は、入浴着の材料や接着加工などの費用に充てる。入浴着は、縫製業が盛んな広陵町の靴下メーカーなどに依頼して量産し、スーパー銭湯で貸し出すなどして普及を図るよう考えている。

 中西さんは「下着や、おしゃれ着の開発にもつなげ、乳がんを乗り越えた女性が、明るく豊かな日常生活を過ごせる環境をつくりたい」と話している。
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 県内では「NCN(奈良キャンサーネットワーク)若草の会」も、12年度に続き2度目の助成金交付先に選ばれた。