がんと仕事 経験者が具体的助言=東京
がん治療を経験し働く人たちは、体調面や企業側の理解不足などで様々な悩みを抱えることが多い。一般社団法人CSRプロジェクトは毎月1回、がんの経験者が集う「サバイバーシップ・ラウンジ」を開催。情報交換しながら働く上での悩みの解決を目指している。
埼玉県に住むC子さん(42)は2009年、乳がんと診断された。手術後、抗がん剤で体のだるさや熱などが出て、勤務先の東京都内の企業をやめてしまった。民間のがん保険も入っておらず、仕事ができずに給料が出ない場合に健康保険から給付される傷病手当金や失業給付などでしのいだ。
故郷の九州で2年間休み、その後東京に戻って派遣社員として働き始めた。「休んだ分がんばらなきゃ」との思いで残業をこなしたが、ストレスや更年期障害が重なり、うつ状態になった。
その頃、サバイバーシップ・ラウンジを知り、通うようになった。「もう少し体を気遣って働いたほうがいいんじゃないか」「能力があるのだから転職してもやっていける」。がん経験者のアドバイスで自分を見つめ直した。
「ずっと派遣で暮らしていくのは不安」と悩みを打ち明けたこともある。「多くの希望先に応募し、返事が来たところから選べばいい」「仕事内容に支障がない場合は、病状や治療の経緯について話さなくてもいい」とアドバイスされ、目の前が開けた気がした。
2年前に今の会社に契約社員として採用され、半年後には希望通り正社員になった。残業は体調に無理のない範囲でこなす。「先輩たちの助言が心強かった。今後は私の経験をラウンジで伝えたい」と話す。
CSRプロジェクト事務局長で社会保険労務士の藤田久子さん(51)は乳がん経験者でもある。「がんになった人が働き続けるには、『制度、運用、配慮』の三つの活用が必要」と話す。
傷病手当金など公的な支援制度を利用し、職場の就業規則などを理解した上で、上司などに業務上で配慮してほしい点を伝えることが大事だという。
「企業が関心を持つのは仕事ぶりで、病気は一番最後の要素。どんな人も仕事上の強みを持っており、それを生かせばがん患者も当たり前に働き続けられる」と藤田さんは言う。