助成事業

がん経験者 患者を支援=福井

 がん患者らの悩みを聞くために闘病経験者らがつくった支援団体「がん患者ピアサポートの会」(福井市)が、患者団体を支援する公益財団法人・正力厚生会の助成先に選ばれた。会員らは「私たちの経験を生かして、患者らの不安を少しでも和らげたい」と思いを新たにしている。(村上和史)
 ピアサポートの会は2013年10月に発足した。がんのピアサポート(仲間による支援)の団体としては県内で初めてだったといい、現在は経験者3人と、闘病を支えた家族1人を含む5人が所属。県済生会病院(同市)で毎月第1金曜に開かれるサロン「メディカルカフェ」で患者と雑談し、医師に打ち明けにくい精神面や生活面の悩みを聞く。
 「突然、がんと告知され、どう生きればいいか分からない」「周囲にどう打ち明ければ……」という訴えもあり、解決策を一緒に探す。
 今月2日のカフェでは、肺がんを克服後も肺に違和感を覚える男性(77)が「肺がつらくて畑をやめた。収穫まで世話できる自信がない」と相談。後遺症への不安と、何かに打ち込みたくてもうまくいかない焦りを訴えた。
 それに対し、肺腺がんの経験者で、代表の伊藤重一さん(65)が「私にも呼吸がつらいことはあったので、不安に思うことはない。何かに打ち込むことは大事。やめると言わず少しずつ始めてみては」と助言した。
 男性は「闘病経験者に相談すると、私の一方的な愚痴にならず、親身になって経験を話してくれるので不安もほぐれる」と笑顔を見せた。
 伊藤さんも00年に病名告知を受けた後、家族以外には打ち明けられず、悩んだ経験がある。「当時は『がん=死ぬ』との固定概念が強く、相談相手がいなかったため、療養期間中も周囲から隠れるように暮らしたのが、つらかった」と、会の設立につながった。
 正力厚生会による助成金は10万円。会員がピアサポーター養成講座を受講する資金に活用する予定といい、伊藤さんは「老若男女を問わず、様々な部位のがんの経験者に会員になってもらい、あらゆる悩みに答えられるようにしたい」と話している。