助成事業

がんの子にウイッグを=大阪

 美容室などで切った髪の提供を受けて、オーダーメイドのウィッグ(かつら)を作製し、小児がん治療などで髪が抜けた子どもにプレゼントしている大阪市北区のNPO法人が、寄付や、美容室での募金箱設置への協力を呼び掛けている。約10万円かかるウィッグを無償提供しており、募金頼みで資金面が追いつかないのが悩み。今年度、公益財団法人正力厚生会のがん患者団体助成事業に選ばれ、関係者は「今は25人が順番待ちの状態。助成金50万円も活用し、少しでも早く届けられるようにしたい」と話している。(川口崇史)
 美容師らが設立した「Japan Hair Donation & Charity(ジャパン ヘア ドネーション アンド チャリティー)」(ジャーダック)。美容師で事務局長の渡辺貴一さん(43)によると、同様の活動をしている団体はアメリカやカナダにはあるが、国内では唯一という。
 渡辺さんらが2008年に同区に美容室を開いた際、髪に関することで社会貢献したいと活動を始め、翌年にNPO法人化。抗がん剤の副作用で脱毛した子どもたちが安心して学校に復帰できるよう、化繊やアクリル製ではなく、より自然に見える人毛100%のウィッグにこだわった。大人用と比べサイズやヘアスタイルの幅が少なく、注文生産だと高価なため、子ども用の提供に目を付けた。
 ただ、「どれだけの人が必要としているのかも分からなかった」と手探り状態が続き、ブログで同NPOを知った小学2年の女児の母親から、最初の注文が入ったのは2年半後だった。
 活動が知られていくに連れて、希望者も髪の寄付も増加。これまでに27個を提供し、現在は4個を作製中。闘病を続け、ウィッグを受け取った女子高校生から「鏡に映った自分が笑った顔を1年半ぶりに見ました」と喜びの声が寄せられたこともあったという。
 ウィッグにするには31センチ以上の長さが必要だが、今では活動に賛同する美容室が全国に約170あり、毎日15~20人分の髪が届く。「5年間がんばってのばしたわたしのかみの毛を、こまっているお友だちにあげて下さい」などとメッセージが添えられていることも多い。寄せられた髪は長さをそろえ、業者がトリートメント処理した後、希望者が現れたら採寸してメーカーに発注。本人に提供する時に美容師が好みの髪形にカットしている。
 採寸から完成まで1か月かかる。渡辺さんは「退院して復学するなどのタイミングに速やかに提供したいが、今は注文が殺到し、資金的に間に合わない状態。今年中には順番待ちを解消したい」と話す。
 募金箱を設置している美容室は全国に約80店あり、「200店まで増やしたい」としている。