NPO法人「アンビシャス」 正力厚生会が助成 訓練費に=京都
犬との触れ合いで、心の安らぎを得る「ドッグセラピー」に取り組むNPO法人「アンビシャス」(中京区)が、公益財団法人・正力厚生会の「がん患者団体助成事業」の助成対象に選ばれた。35万円の助成金は、ホスピス病棟の慰問などで活躍するセラピー犬の訓練費用などに充てられる。(木須井麻子)
代表の松岡幸子さん(55)(同区)が、愛犬家仲間の7~8人で1999年、「犬と一緒に何らかのボランティアができないか」との思いで団体を発足させ、2004年にNPO法人格を取得。犬を連れて老人や障害者の福祉施設を訪れるドッグセラピーや地域の見回り活動などに取り組んできた。
がん患者の施設を訪れるようになったのは07年から。治療困難ながん患者が痛みを和らげる緩和ケアを受けながら過ごすホスピス病棟をもつ日本バプテスト病院(左京区)から「犬と過ごしたいという患者さんがいる」と相談されたのがきっかけだった。
希望したのは、まだ20歳代の男性患者だった。メンバーが飼い犬を連れ、交代で病室を訪ねた。男性は、ベッドに犬を載せ、そのぬくもりを感じると柔和な表情になった。慣れてくると、男性は犬のリードを引いて他の病室やサロンを回り、交遊の輪を広げた。数か月後、男性は亡くなったが、松岡さんは「亡くなる3日前、犬がリードを引いて男性を引っ張ると、楽しそうな笑顔を浮かべていた姿が今も忘れられない」と振り返る。
同病院との交流は続き、今も月2回程度、松岡さんやメンバーが飼い犬を連れて出かけ、患者が集まるサロンなどで1時間ほどを過ごす。
患者からは犬と触れ合うことで、「痛みを忘れる」「気持ちが落ち着く」「しんどかったけど、少し楽になった」「久しぶりに笑うことができた」などと好意的な声が寄せられている。
現在、アンビシャスの活動には京都や滋賀、大阪の30~60歳代の25人がプードルやコーギー、ラブラドールなど約40頭の飼い犬と一緒に参加する。
助成金は、飼い犬がホスピスを始め、様々な施設を訪れても行儀良く振る舞えるようにする訓練を専門家から受けることなどに活用する。
松岡さんは「犬のもつ癒やしの力は大きい、と日々、実感しています。訪問を楽しみに待つ患者さんのためにも活動内容を充実させていきたい」と話している。