助成事業

がん患者遺族の心ケア=滋賀

 がん患者の遺族を対象に、悲嘆を和らげる「グリーフケア(悲しみのケア)」に取り組む「セルフケアグループきらら会」(守山市)が、公益財団法人「正力厚生会」が公募した2012年度のがん患者団体助成事業の対象に選ばれた。助成金50万円は、グリーフケアの専門家を招いた講演会開催に充てる。池田美奈子代表(54)は「一人で苦しむ遺族もいる。より広く会の活動を知ってもらいたい」と話している。
 県立成人病センターで行われていたがん患者、遺族、家族の集いが前身で、2010年に「きらら会 遺族の部」として活動を本格化。遺族の自助グループとして4月に改称した。会員は県内外の約30人。毎月1回、公園など様々な場所で、悩みを語り合う「遺族サロン」を催している他、講演会などを行っている。
 池田代表が活動に関わるようになったのは、夫の久夫さん(06年に50歳で死去)が、03年に大腸がんの宣告を受けたのがきっかけ。「病気や治療についての知識がないのに、突然告げられ、途方に暮れた」と振り返る。
 病院で会の活動を知り、遺族から話を聞くうち、「同じ立場でないと、つらさはわからない」と、心のケアの重要性を実感した。当時は代表者と各遺族がやりとりするだけだったが、会員向けの案内「きらら会通信」を定期的に発行して遺族同士の横のつながりを深めるなどし、10年に代表になった。
 助成を活用し、今年度は精神科医を招いて講演会を開く。悲嘆には喪失感や自責の念などが複雑に混じる上、うつ的な不調を発症する遺族もいるため、不調についてと、遺族全般向けとの2回、開く計画だ。希望者が遺族サロンを体験できる場も設けたいと考える。
 遺族へのケア体制は、国内ではまだ確立されていない。池田代表は「苦しむ人の駆け込み寺になれるよう、医師らとも連携して活動を続けたい」と話している。