正力厚生会は、医療機関などへの助成を通じて、がん患者とその家族を支援しています。
地域におけるがん患者の緩和ケアと療養支援情報 普及と活用プロジェクト 【冊子の改定等】
国立研究開発法人がん研究センターがん対策研究所
【がん情報ギフトプロジェクト】
信頼できるがん情報を地域にきめ細かく普及させるため、正力厚生会では2019年度から、国立がん研究センターの「がん情報ギフト」事業の拡大強化を図るプロジェクトに助成しています。
「がん情報ギフト」は、国立がん研究センターの「がん対策研究所」が、信頼できるがん情報を身近なところまで届けようと、寄付を基に全国の図書館へがん情報に関する冊子セットを贈る取り組みです。2017年夏から始まり、同研究所では地域の拠点病院や図書館と共に、図書館でのがん情報の企画展示や研修会、オンラインフォーラムなども開催してきました。
寄贈先図書館が目標の全国500館を上回ったことから、今後は贈った冊子のさらなる活用を図り、正しいがん情報普及に役立てる活動を進めます。
地域におけるがん患者の緩和ケアと療養支援情報プロジェクト
国立がん研究センターとがん研究会、東京大学死生学・応用倫理センター、帝京大学による「地域におけるがん患者の緩和ケアと療養支援情報プロジェクト」に対して、正力厚生会では2012年度から6年間、継続的支援を行いました。
同プロジェクトは第一期(2012~14年度)で在宅療養支援ガイドの小冊子を制作し、第二期の2015~17年度は、この冊子も活用しながら全国各地で一般市民向けのフォーラム、専門職向けの研修会を重ね、在宅療養の普及と啓発に取り組んできました。
最終年度となった2017年度には、一般向けフォーラムを全国3か所、専門職向け研修会を1か所で開催し、いずれもほぼ満席となるほどの関心を集めました。フォーラムの様子は動画で記録し、正力厚生会のホームページと同プロジェクトのウェブサイト「がんの在宅療法」で全編視聴できるようにして、多くの方々と情報共有を図れる体制を整えました。
6年間のプロジェクトでは、①多職種連携の重要性の再確認②地域住民の理解と協力の重要性③地域の次世代を担う若者の人材育成④これらの情報の共有と発信の重要性――などの成果が得られました。
公益財団法人がん研究会有明病院 【データベース構築】
がんの疾患部位ごとの治療方法や副作用、5年生存率など患者に役立つ患者診療情報のデータベース化を支援しました。
この事業は、がん医療で全米一の評価を受けているMDアンダーソンがんセンター(テキサス州ヒューストン)のデータ管理方法を参考にしながら推進されました。
具体的には、子宮頸がんの場合、がん研有明病院の医師らで構成される研究会が、都内主要3病院(都立駒込病院、東京大学病院、がん研有明病院)における治療法別実態調査を実施し、各病院の性格・特長・提供可能な能力に関する指標(クオリティー・インディケーター)のデータベース構築に取り組んでいます。
今後は、他の医療機関との連携を広げながら、疾患部位の範囲を拡充することで、データベースをより充実させるとともに、必要とされる患者やその家族に、最新で的確な情報をインターネットでリアルタイムに提供できる体制を整える方針です。
独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター 【相談員養成講座】
全国のがん診療連携拠点病院相談支援センターの相談員を対象とした研修と学習ツールを提供している国立がん研究センターがん対策情報センターに対し、正力厚生会は2006年度から2010年度までの5年間にわたり、助成しました。
患者一人ひとりが、その人にふさわしい生活をおくったり治療方法を選択したりできるよう科学的根拠に基づく信頼できる情報を患者に提供することを目的とした「がん専門相談員」を養成する「相談支援センター相談員基礎研修会」には、延べ6000人以上が受講しました。
研修修了者は、全国の医療現場で、がん患者やその家族の支えとなっています。この研修会は、正力厚生会の一部助成を受けて実施されました。
このほか、学習ツールとして冊子「がん専門相談員のための学習の手引き~実践に役立つエッセンス」「DVDで学ぶがん専門相談員のための学習の手引き」の制作費の一部や「患者必携 がんになったら手に取るガイド」の購入・配布費用として、正力厚生会からの助成が充てられました。このように制作、配布された教材は、全国のがん診療連携拠点病院相談支援センターの研修会の教材や実際の相談の場面で活用されています。
静岡県立静岡がんセンター 【Webよろず相談】
静岡県立静岡がんセンターが運営する「Web版がんよろず相談Q&A」では、がんにまつわる悩みや相談について、7,885人のがん体験者の方々が自由に記述した内容の調査結果に基づいて構築したデータベースを利用できます。がん患者の視点に立った、からだ、こころ、暮らし、人と人との関係などがんを巡る様々な悩み約1万件が集約されたユニークなデータベースです。
このデータベースでは、「体力が低下したまま、回復しないのに悩んでいる」「抗がん剤治療の影響で食欲不振に陥り、食事が取れずにつらい」など体験者の具体的な悩みを理解したうえで、サイトで閲覧できる助言を通じて、問題解決のヒントを入手することが可能です。利用者は、自分の悩みや問題を自然体の文章で入力してデータベースを検索できます。
これは、膨大な数に上るデータの中から利用者が求めるデータをできる限り正確に抽出できる独自の検索エンジンを開発したことで、実現しました。正力厚生会は、この検索エンジン開発に対して、助成しました。
データは随時、更新・増加しており、がん患者はもとより、その家族、全国のがん診療連携拠点病院に設置された相談支援センターの相談員らを支援するツールとして大いに役立っています。
小冊子発行
正力厚生会は2006年度から、医療機関が発行するがんをテーマにした冊子作成を支援しております。発行された小冊子は、全国のがん治療拠点病院などに配布され、がん治療を巡るさまざまな知識・情報の普及・啓発に活用されています。
主な冊子とその作成医療機関は次の通りです(発行元名称は当時のものです)。
- 「わかりやすい腫瘍マーカー」(かながわ・がんQOL研究会)
- 「放射線治療を受けるあなたのために」(国立病院機構北海道がんセンター)
- 「緩和ケア 穏やかな日々を過ごすために」(癌研有明病院)
- 「がん治療による口腔粘膜炎 口のトラブルに備える」(静岡県立静岡がんセンター)
- 「がんと向き合うあなたへ ご存知ですか 心のケア」(埼玉医科大学国際医療センター精神腫瘍科)
- 「がん化学療法後の消化器症状 抗がん剤治療を受ける皆さんのために」(千葉県がんセンター)
- 「在宅緩和ケアの手引き あなたの暮らしと家族を支えるために」(広島県緩和ケア支援センター 県立広島病院)
東京大学のがん医療講座
正力厚生会は、東京大学医学部付属病院が主催する講演会やセミナーに対する助成にも積極的に取り組んできました。
2008年12月に東大で開かれたがんの高度放射線治療をテーマにした講演会「物理学とがんの放射線治療」では、東大病院放射線科の中川恵一准教授(当時)が、医学物理士と呼ばれる人材の育成が急務であることを訴えました。
同じく講師として登壇した2002年のノーベル物理学賞受賞者小柴昌俊・東大特別栄誉教授(当時)は、「物理学を学んだ人たちが、放射線治療など新しい分野に挑戦することは素晴らしいことだ」なとど語り、活発な意見交換が見られました。
このほか、「がんのひみつ-日本人のがん治療を問う」(2008年6月開催)、「師弟で語る生と死」(2006年12月開催)の各講演会・セミナー運営にも助成してきました。