助成事業

災害時の備え 冊子に=新潟

 公益財団法人「正力厚生会」が公募した2017年度のがん患者団体助成事業の助成金交付先に、人工の肛門や膀胱(ぼうこう)で生活しているオストメイトの生活環境改善を目指す「日本オストミー協会 新潟県支部」が初めて選ばれた。助成金で災害時の備えなどをまとめた小冊子を作る予定で、同支部は「読んで災害時の不安を和らげてほしい」としている。
 同支部の会員は約200人。オストメイトは、大腸がんや膀胱がん、事故などの影響で消化管や尿管が損なわれ、排せつのためにストーマと呼ばれる人工の肛門や膀胱をつけた人を指す。ストーマに完全密閉のビニール袋を装着し、そこに排せつ物がたまる仕組みで、定期的に交換が必要だという。
 ストーマケア専門の看護師が年に10回ほど県内各地を訪れ、主に器具の選び方を助言する。「入浴時の器具の扱い方を知りたい」「大衆浴場に行きにくい」など日常生活の悩みを聞くこともある。鶴間修二事務局長(71)は「災害への備え方が分からないと不安をこぼす人が一番多い」と話す。昨年4月の熊本地震では替えの器具を持っていなかったり、避難所での排せつに時間がかかったりしたとの声を聞いた。こうした不安に応えるため、冊子を作ることにした。
 冊子は、避難先などで医師が患者にあった器具をいち早く提供できるようストーマの大きさや皮膚の特徴を書き込む欄を設けるほか、排せつケアの認定を受けた看護師のいる病院のリストも盛り込む。今年9月の完成を目指し、県内のオストメイト約3500人に配布する予定だ。
 ストーマはオストメイトごとに異なり、他人の器具を利用できず、同支部は各自治体に対し、器具の保管や備蓄への協力を求めている。鶴間事務局長は「個人だけでなく市町村も一緒になってオストメイトが暮らしやすい環境作りをしていきたい」と話していた。