助成事業

患者会の情報が頼りに=神奈川

 小細胞肺がんは肺がん全体の10~15%と少なく、個々の患者が孤立しやすい。そこで、その他の肺がんも含めた患者会が、最新の治療情報を提供するなど仲間として支えている。
 東京都の加藤徹さん(64)は昨年8月、原因不明のせきが続き、病院で検査を受けた。左肺に約3センチの影があり、小細胞肺がんと判明した。12月まで、標準治療となっている抗がん剤と放射線治療を受けた。
 治療でがんは見えなくなったが、不安は残った。インターネットで調べると、小細胞肺がんは闘病記や新薬などの情報が少なく、5年生存率が低いというデータばかりが目立つ。「果たしてこの治療で良かったのか」。一人で考えるほど絶望的な気持ちになった。
 そんな時に見つけたのが肺がん患者会「ワンステップ!」の代表を務める長谷川一男さん(45)のブログ。長谷川さんは非小細胞肺がんで「余命10か月」と宣告されたものの、自ら情報を集めて様々な治療を選択し、約6年闘病してきた。
 「こういう患者もいるのか」。加藤さんは、患者同士の仲間意識を高めるといった患者会の活動にも魅力を感じ、メール会員になった。治療法などを相談したところ、自分の知らない抗がん剤の臨床試験の情報などを教えてくれた。
 この情報を病院で尋ねると、薬剤師などから詳しい説明を受けられた。加藤さんは「様々な情報を知ることで安心でき、希望が持てる。患者が情報や知識を持っていないと、治療のチャンスを逃してしまうのではないか」と懸念する。
 長谷川さんも「患者が少ないからこそ、患者会を利用して情報を集め、役立ててほしい」と話す。知ってほしい治療情報の一つに、国立がん研究センターが中心になって行っている遺伝子診断ネットワーク「LC(Lung Cancer=肺がん)スクラムジャパン」がある。肺がん患者へ遺伝子解析の機会を広く提供し、希少な遺伝子タイプの患者を見つけて薬の臨床試験(治験)への参加に結びつける。肺がんでは、臨床試験も治療の選択肢の一つとして重要になる。
 長谷川さんの呼びかけで昨年11月、各地で活動してきた六つの患者会が、初の全国組織「日本肺がん患者連絡会」を設立した。
 連絡会は昨年12月、日本肺癌(がん)学会と連名で、新しいタイプの抗がん剤として期待を集める免疫チェックポイント阻害薬を、非小細胞肺がんに使うに当たっての要望書を厚生労働省に提出した。単独では難しかった、こうした政策提言もできるようになるなど、患者会の活動は広がっている。