助成事業

がん患者の就労支援=岩手

 公益財団法人「正力厚生会」が公募した2016年度がん患者団体助成事業の助成金交付先に、盛岡市のNPO法人「いわてパノラマ福祉館」が初めて選ばれた。理事長の高舘美保子さん(52)は「がん患者が働き続けることで、本人と企業の相互の利益につながる」と意義を話す。また、15年度に続き、がん患者会「盛岡かたくりの会」も選ばれた。
 いわてパノラマ福祉館で行っているがん患者の就労支援の名前は「ココア(COCOA)」。がん、職業、両立、支援などの英単語の頭文字を組み合わせた。
 月1回、岩手医科大の「がん患者・家族サロン」で、がん治療と仕事の両立を話し合う「おしごトーク」を行っている。がん治療と仕事を両立させている人や、社会保険労務士などの専門家を招き、毎回7、8人の患者が集まる。両立実現の手助けとなる傷病手当金などの制度について説明し、自由に話し合ってもらう。
 企業向けの研修「就労ピアサポーター研修会」も年2回開催し、人事担当者へ制度などの周知を図っている。今後は、一般の人に向けたフォーラムも行う予定だ。
 いわてパノラマ福祉館は2004年に設立され、障害者や若者の就労支援活動を行ってきた。15年から、がん患者の就労支援を始めた。高舘さん自身ががんを患い、仕事と治療の両立の難しさを実感したことなどがきっかけだった。高舘さんは「フレックスタイム制や在宅勤務など様々な仕事の方法があることを知ってもらい、個々人にあった働き方を見つけてほしい」と話す。
 また、職員の中には、がんで仕事を辞めた経験をもつ人もいる。新田真紀さん(47)もその一人で、「仕事を続けることで社会とのつながりを持てる。治療と仕事のバランスをとれるようにサポートしていきたい」としている。